高山とイヤフォンの穴 | 聴覚にまつわる音のお話
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高山とイヤフォンの穴

アドフォクスの会社がある青梅市(東京都)はすっかり涼しくなり、喉元過ぎればという諺にあるように、先日までの猛暑が嘘のような気持ちの良い季節になりました。旅行に行きたくなった方も多いのではないでしょうか。

(写真) 高山を登る車内からの景色
高原を登る車内からの画像

旅行などで車で高山を上る際、鼓膜がツーンと張った経験があると思います。
これは、鼓膜の内側と外側の気圧が急激に変わるのが原因で、つばを飲み込んだり、あくびをして解消している筈です。


イヤフォンには、この鼓膜にかかる圧力を調節する穴がある事をご存知でしょうか。
次の写真はアドフォクスの補聴器や集音器で使用しているイヤフォンユニットです。右側がイヤフォン下部を拡大した画像で、矢印の部分に穴が見えます。

(写真) 穴が二つ開いています
イヤフォンとベント穴
左側の穴がイヤフォンから外側の穴で、ベント穴とも呼ばれ、イヤフォンを装着した際に鼓膜にかかる圧力を逃がします。右側の穴はイヤフォンの後ろ側の穴で、背面の圧力をジワリと逃がすのが目的です。

ベント穴には、イヤホンコードが衣服に擦れる音(タッチノイズ)や、自分の声が大きく聞こえたりする現象を緩和する役目があり、一般的に補聴器ではベント穴を開けます。


しかし、ベント穴を開けると低域が出難くなります。音楽を聞く際には低音が無いと音に存在感が無くなるので、ベント穴を閉じて(開けないで)低域を延ばす工夫をしている製品も存在します。
例えばアドフォクスで出しているBME-200の場合はベント穴を埋め、低音を増強するチューニングをしています。(BME-200は音楽よりの製品としています)

(写真) BME-200ではベント穴を埋めて、低音を増強しています
BME-200と埋めたベント穴の画像
(余談ですが、このBME-200は私が使用しているもので、外の音を直接に聞けるようにイヤーパッドにポンチで1mm〜1.5mmの穴を開けています。音漏れが回り込むのを避けるため、録音中はモニター音量を消して直接音だけを聞きます)

なお、アドフォクスの補聴器や集音器が「補聴器らしくない、普通の音楽用イヤフォンの音がする」と言われるのは、使用しているユニットがダイナミック型である事が一つの大きな要素です。
(ほとんどの補聴器がバランスド・アーマチュア型(BA型)を採用しています。難しい話になりますが、BA型と音の分離性についてはバルク・ハウゼンの現象と合わせ、各自で考察してみて下さい)

音楽の場合、特に現代の商業的な音楽では、楽器や音声など、それぞれのパートが重ならないように、パート毎にイコライザで調節してからミキシングするので、多少歪が大きいスピーカー(イヤフォン)で聞いても音楽を楽しめます。
しかし、生演奏やオーケストラなど音の重なりが多い場合は、音の分離性が良いスピーカーを使用しないと、アンプの周波数特性を調節しても聞き取り易くなりません。

そして通常生活では音が沢山重なるので、アドフォクスでは音の分離性を聞き比べた結果としてダイナミック型イヤフォンを採用しています。



先日、自分のiPhoneに使用していたイヤフォンが壊れてしまったので、近所の電気屋さんのイヤフォンコーナーで試聴して音質の良さそうなものを購入してきました。

(写真) 購入したオーディオテクニカ製ATH-CKM55
ATH-CKM55画像

まじまじと見て不思議に思ったのが、イヤフォンの耳に当たる面にはベント穴と思われる穴が開いていますが、装着する際に鼓膜に圧力がかかるので実際にはベント穴が塞がっていると思われます。何を目的にした穴なのかが不思議に思いました。

このイヤフォンが価格帯の割りに低域が綺麗に出るのは、ベント穴が塞がって密閉度が高い事が影響していると推測します。

ここでもう一つイヤフォンを見てみましょう。こちらはSONYさんの13.5mmという非常に大型のドライバーユニットを採用しているイヤフォンです。

(写真) SONY製MDR-EX90SL
MDR-EX90SL画像

豪快に穴が開いており、装着した際にも鼓膜に圧力を感じません。
とても大型のドライバーユニットを使用しているので低域に余裕があるのでしょう。ベント穴と呼んでいいのか迷うほど大きな穴が開いていますが、低域に不足を感じません。


さてさて、今回はイヤフォンをベント穴という視点から見てみましたが如何でしょうか。
この空気抜きの穴ひとつを見てもイヤフォンには個性があり、素材を活かすように工夫されています。

音響機器は、どんな音が聞こえるかが一番大事なので、まずは色んな製品の音を聞いてみて下さい。音を聞いたら次に何故そう感じるのか、その理由を検証してみると、製品をより深く理解できて面白いのではないでしょうか。




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at 18:03, adphox blog team, イヤフォン

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